蕨市立病院は、市内で唯一の二次救急指定病院であり、周産期医療や小児医療を担うなど、市民の命と健康を守る重要な拠点である。一方で、昭和45年の建設から50年以上が経過し、耐震性の不足や老朽化が著しい現病院の更新が急務であることは、当議会としても十分に認識しているところである。
しかしながら、現在の本市病院事業の経営状況は極めて深刻で、直近の令和6年度決算では約3億2,900万円の純損失を計上。累積赤字である未処理欠損金は約22億5,645万円にまで達している。
さらに新病院建設に係る事業費の膨張も極めて大きな懸念材料である。令和7年3月時点の基本構想において約67.2億円と試算された概算事業費は、令和8年2月の基本設計素案では約90.2億円へと、わずか1年足らずで約23億円も増額となった。医療機器等を含めれば実質120億円規模となる可能性がある中で、現在の脆弱な収益構造のまま突き進むことは、病院経営のみならず本市の一般会計そのものを揺るがす事態を招きかねない。
こうした中、執行部より「蕨市立病院経営危機打開プラン」が示されたが、令和8年度の目標患者数を「入院1日平均103人」「外来1日平均370人」と掲げている。しかし、令和7年度補正予算において入院患者数を「1日77人」、外来患者数を「1日341人」へと大幅に下方修正した現状から、わずか1年で劇的な回復を遂げるという計画は難しい課題であり、医師の確保などこれまでにない相当の努力が求められる。
経営改善なくして新病院の成功はあり得ないが、当議会としては、大規模災害時における現病院の倒壊リスク等をこれ以上放置できないという決断のもと、
本予算案を可決するものである。ただし実施設計の執行は、もはや引き返すことのできない最終段階への突入を意味する。
したがって、今まで述べた厳しい経営環境の下でも、市民に求められる必要な機能を維持し実効性のある経営改善を進めるためにも、議会への透明性ある報告と、第三者機関による客観的評価の導入の確実な実施を求め、ここに本附帯決議を付すものである。
記
1 外部アドバイザーによる伴走型支援体制の早期構築
病院経営に精通した外部アドバイザーによる伴走型支援体制を、可能な限り早期に構築すること。外部アドバイザーの選定は病院の裁量を尊重しつつ、候補者の比較検討など透明性・中立性に配慮した手続きにより行うこと。契約方式は随意契約を妨げないが、随意契約による場合はその必要性
・合理性が説明できるよう理由を整理すること
2 外部アドバイザーによる助言の活用と説明性の確保
助言の範囲は、新病院設計・経営方針・経営危機打開プランとその効果検証・人事など病院経営に関する全てを含めること。また助言の要旨及びそれに対する病院の採用・不採用の対応方針を整理し、経営改善及び新病院整備の意思決定に活用し、適宜、議会にも報告すること
3 基本設計案の妥当性検証と実施設計への反映
外部アドバイザーの助言も踏まえ、基本設計案について、機能・コストに加え人員・動線・DX等の運用可能性の観点から妥当性を検証し、必要な調整方針を実施設計に反映すること。またそのために、実施設計に於いて基本設計の検証期間を3カ月程度は設けること
4 実施設計の期間延長
外部アドバイザーからの助言や院内外の会議などを踏まえて、前述の実施
設計に於ける基本設計の検証期間を延長した方が総合的に市民に資する
との提案が有った場合には、議会に報告のうえ、設計事業者との協議や補正予算案の提出など必要な措置を講ずること
5 地域医療連携体制への貢献
本病院の運営にあたっては、地域医療圏における医療提供体制を踏まえ、近隣の高度急性期医療機関との役割分担及び機能連携を明確にしたうえで、本市立病院が担うべき医療機能の位置付けを明確化すること。また、地域包括ケアシステムの構築を見据え、かかりつけ医との連携強化や紹介
・逆紹介の推進を図るとともに、休日夜間診療及び救急医療の提供体制についても、医療圏全体での効率的かつ持続可能な役割分担となるよう検討すること。さらに、これらの取組にあたっては、地域医療機関との信頼関係を基盤とした連携体制の構築に十分配慮し、単独完結型とならない医療提供体制の確立に努めること
6 経営危機打開プランの改善
外部アドバイザーの助言に加えて市立病院の基本理念に書かれている市
民の福祉向上に資する観点も踏まえて、院内会議にて確認する主要指標の項目や目標値、打開策などについて適宜改善を行うこと
7 効果検証と議会への情報共有
人事変更や外部アドバイザー就任などの重要事項については、出来る限り速やかに議会へ報告すること。また、9月議会までに、当該期間の決算状況・決算から試算される令和8年度の医業収支額・それを踏まえた今後の方針概要を示すこと。なお、院内の管理会議にて月次点検を行っている内容についても、適宜議会へ情報共有すること
8 建設後10年間の財政シミュレーションの公表
上半期決算後などの適切なタイミングで建設費・医療機器更新費・維持管理費・起債償還・市からの繰出額を含む建設後10年間の収支見通しを複数シナリオで公表すること
9 一般会計繰出金のガイドライン設定
一般会計からの繰出額について許容範囲の考え方を示し、逸脱時の是正プロセスを定めること
以上、決議する。
令和8年3月23日
蕨市議会議長 大 石 圭 子